相続にまつわるあれこれについてのコラムです。
第6回目は死亡退職金や遺族給付金についてご説明します。
被相続人が死亡した際、会社等から死亡退職金や遺族給付金が支給されることがあります。
では、この死亡退職金や遺族給付金は遺産に含まれるのでしょうか。
死亡退職金とは、公務員や私企業の従業員が在職中に死亡した場合に、法律あるいは退職金規定など私企業の内規によって支給されるものをいいます。
この死亡退職金の法的性質については、①賃金の後払いとしての性質、②遺族の生活保障としての性質があるといわれております。
上記の死亡退職金の法的性質のうち、①賃金の後払いとしての性質に着目すれば、被相続人の賃金の後払いとして、遺産性を肯定する方向に傾き、②遺族の生活保障としての性質に着目すれば、遺族に固有に支給されるべきものとして、遺産性を否定する方向に傾くことになります。
このように、死亡退職金の法的性質からは、遺産であるか否かを決することはできず、具体的な事案に応じて個別的に決するべきものであるとされています。
判例は、受給権者を定める規定を解釈し、民法の相続人とは範囲・順位が異なって定められている場合には、専ら遺族の生活保障を目的とし、死亡退職金の受給者の固有の権利として取得するものと解するのが相当であり、相続財産にならないとしています(最高裁判決昭和55年11月27日)。
この場合、支給される死亡退職金の支給慣行の内容や支給の経緯等を勘案して、個別的に決するべきものであるとされております。
実際に、判例、裁判例上も受給権者が定まっていない場合の死亡退職金の遺産性についての判断が分かれております。
たとえば、最高裁判決昭和62年3月3日は、支給規定のない財団法人が、死亡した理事長の配偶者に対して死亡退職金の支給決定をした上、これを支払った場合において、その死亡退職金は、亡理事長の相続財産として相続人の代表者としての配偶者に支給されたものではなく、相続という関係を離れて配偶者個人に支給されたものであるとしました。
これに対し、東京地裁昭和45年2月26日判決は、特別の事情の認められない一般の死亡退職金については、通常本人の生前の生前の労務に対する報償としての性質を多分に持つものであると解し、退職金請求権は、本来的には本人自身の権利に属していたものと理解することができ、本人の死亡によって、他の本人所有の財産と同様、相続財産に帰属したものであるとしました。
遺族給付金とは、社会保障関係の特別法によって、死者と一定の関係にある親族に対してなされる給付金であり、損失補償、遺族年金、弔慰金、葬祭料などが含まれます。
遺族給付金は、一般的に受給権者の範囲及び順位が相続の場合と異なっていることなどに照らすと、遺族の生活保障のために支給されているものであるといえるから、遺族固有の権利として遺産には含まれないとされております。
このように、特に死亡退職金についての遺産性の判断については、死亡退職金の支給の原因となる規定の解釈や、支給慣行、支給の経緯など、個別具体的に決することとなります。
被相続人の死亡退職金の支給があった場合、それが遺産に属するか否かについては、早めにご相談ください。