性犯罪処罰規定に関する平成29年の刑法一部改正⑦

~シリーズ第7弾 被害者支援の観点から見た課題と展望 Ⅰ~

継続的な課題について

 今回の刑法改正法案の審議においては、議論がなされつつも、改正には至らなかった問題がいくつかあります。

 本稿では、そのうちの一つである「暴行脅迫要件」の問題についてとり上げます。

 

暴行脅迫要件に関する問題

 強制性交等罪(旧 強姦罪)の成立要件として、「暴行又は脅迫を用いて」という要件が定められています。法案審議の過程においては、この要件について、被害者救済等の観点から緩和ないし削除すべきではないかという議論がありました。

 結果として、改正には至りませんでしたが、以下の項において、この問題についての積極意見及び消極意見の両方をご紹介したいと思います。

 

判例通説の確認

 これまでの判例通説は、少なくとも旧強姦罪の要件たる「暴行又は脅迫」について、「反抗を著しく困難ならしめる程度」の暴行脅迫が必要であるとの立場であると理解されてきました。

 

改正に積極的な意見の紹介

 上記判例通説の立場に対しては、次のような観点から、暴行脅迫要件を不要とすべきあるいは緩和すべきとの意見があります。

 

・強い恐怖心から、明白な暴行脅迫がなくても、身体が硬直したり声が出なくなったりする性犯罪被害の実態がある。

・当罰性の本質は、意思に反して性的行為が強制されるところにある。

・暴行脅迫要件に関する認定が厳しく、本来処罰されるべき事案につき、立件や訴追が不可能とされたり、起訴されても無罪とされてしまうことがある。

 

改正に消極的な意見の紹介

 暴行脅迫要件の削除や緩和については、次のような観点から消極的な意見も示されています。

 

・裁判実務では、外形的な暴行脅迫がそれ自体として一般的にはそれほど強度なものと解されなくても、被害者の年齢、精神状態、行為の場所、時間等諸般の事情を考慮して、当該被害者にとって抵抗が困難と認められる場合には、暴行脅迫要件の充足を認めている。

・暴行脅迫要件は、確実に被害者の意思に反する行為であったと認定するために有用に機能している。

・監護者わいせつ罪及び監護者強制性交等罪の新設により、被害者が18歳未満のケースについては、一定程度救済が可能である。

 

~次回シリーズ第8弾のコラムの予定~

 次回の第8弾では、「被害者支援の観点から見た課題と展望 Ⅱ」として、「性交等同意年齢の引上げ」の問題について取り上げます。

 

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