交通事故で受傷した場合、その治療のために病院に通うことが多いでしょう。そして、通院する際、場合によっては、交通費がかかってしまう場合もあるでしょう。
そこで、今回は、治療関係費のうち、通院した場合に発生する「通院交通費」について説明したいと思います。
1 被害者本人に関する交通費
交通事故によって受傷した被害者本人が、その受傷のために通院した場合に発生する交通
費に関しては、原則として、現実に支出した交通費全額を損害として請求できます。
もっとも、交通事故による受傷を原因とする損害の賠償を求める以上、通院する必要が全
くない場合には、いくら交通費を支出したとしても、加害者に請求できる損害とはいえず、
加害者に争われることもあるでしょう。
いずれにしても、支出した交通費の領収書や、移動の記録など、請求する場合に必要とな
る記録を残しておくことが重要です。
2 付添った近親者に関する交通費
次に、交通事故によって受傷した被害者本人が通院する際、被害者本人に近親者が付
き添った場合、近親者が支出した交通費は損害として認められるのでしょうか。
この点に関する実務上の扱いは、「看護のための近親者の交通費も被害者本人の損害とし
て認められる」としています。
しかしながら、被害者本人に通院する必要がなければならないのは、被害者本人に関する
交通費の場合と同様です。加えて、被害者本人が通院する際、近親者が付き添う必要があっ
たのか否かという点も問題になることがあり、損害と認められるか否かにつき、被害者本人
の場合より厳格に判断されます。
なお、近親者に関する交通費は、前回説明した、近親者の付添看護費に含まれているとし
て、別途の損害として認めないという裁判例もあります。
それでは、通院交通費が損害といえるとして、支出した金額は、必ず全額損害として認められるのでしょうか。
この点に関しては、先ほど説明したように、あくまで「原則として」ということであり、どのような状況であれ、必ず全額が補填されるわけではないことに注意する必要があります。例えば、腕を軽く打撲した場合のように、歩くことに全く支障がない状況で、徒歩5分の病院にタクシーを利用して通院した場合、果たしてタクシーを使用する必要があったのかということが問題となることは想像に難くないでしょう。
つまり、当該交通費を支出したことにつき、受傷の程度、部位、交通機関の便などの諸般の事情を考慮して、当該交通費としての支出が「相当」といえるか否かという観点から、損害として認められるか否かの判断を行うことになります。
基本的には、通院交通費として認められる損害は、電車やバスの料金としての損害若しくは自家用車を利用した場合の実費相当額であり、タクシー利用料は、電車バス、自家用車を使用できない、使用した場合の不都合が大きいといった、タクシー利用の相当性が認められる場合に損害となるろいう取り扱いがなされることが多いと思います。
受傷した被害者は、交通費を加害者に支払ってもらえるのか不安になることがあると思います。その不安を解消するだけで、安心して通院することが可能となりますので、通院交通費の請求に際してお悩みの方は、一度専門家に相談することをお勧めします。